トリップしたら国王の軍師に任命されました。
趣味の史跡巡りや歴史系の本や映画を見ることが楽しい。特に寂しくもないし、自分からいいなと思う男性に出会ったこともない。
(私もいつか結婚とかできるのかな)
予想もしないいい出会いがあって、トントン拍子で話が進み、結婚式を挙げて……。
そんな妄想をしていたら、明日香の頭に不思議な光景が閃いた。
中世ヨーロッパ的な、立派な教会。たくさんの参列者は映画みたいなドレスや軍服を着ている。
(なにこれ。どこ?)
突然頭痛に襲われ、明日香は目を閉じた。押さえた頭の中に、見覚えのない景色がフラッシュバックする。
深い森の中の小屋。大きな城。天蓋のついたベッド。長身の軍服を着た男が、手を差し伸べてくる。
(もうやめて)
何がなんだかわからない。明日香は強く首を横に振った。
視界が暗くなる。目を開けると、頭痛が止まった。
「ええ~、なに今の。ハッ、もしや……前世の記憶とか!?」
浴室に反響した自分の声を聞き、急にバカバカしくなった明日香は、ざぶざぶとお湯で顔を洗った。もう、男の顔は覚えていない。
「気にしないで寝よう……」
癒しの入浴タイムで、逆に疲れてしまった。眠さも限界だった明日香は、突然襲った謎の幻影のことを考えもせず、寝てしまった。