トリップしたら国王の軍師に任命されました。
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「あの小娘が戻っただと?」

 密偵からの報告を聞いたバックスは眉をひそめた。

「我らカルボキシルの騎馬隊を一度壊滅に追いやった、あの軍師か」

 隣にいたカルボキシル王は忌々し気に舌打ちした。

「奴らが体制を立て直す前に、攻め込もう。任せたぞバックス。この戦いに勝利すれば、システインはお前のものだ」

「はっ」

 厚かましくシステイン王城の玉座に座ったカルボキシル王に一礼し、バックスは部屋を出ていく。

(バカなカルボキシル王よ。私に利用されているとも知らずに)

 システインを手に入れるため、情報を流し、協力してきた両者だが、バックスには王がシステインを自分に渡す気がないことをわかっていた。

(先にシステイン軍を壊滅させてから、ゆっくり料理してやる)

 バックスの頭の中には、今からの戦闘だけではなく、その先、そのずっと先のビジョンまでが見えていた。

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