トリップしたら国王の軍師に任命されました。

 聞き覚えのある高い声に、バックスはハッとした。整列した兵士の間から、小柄な女性が現れる。黒髪の彼女は、女性でありながら軍服を着て、ジェイルの横に立った。

「本当に生きていたのか」

 両軍の間には十メートルほどの隔たりがあった。それにも関わらず、明日香にはバックスの舌打ちが聞こえた気がした。彼はそんな顔をしていた。

「教会の伏兵たちも、夜明けに奇襲かけさせてもらったから」

「なんだと」

 バックスはシステインに詳しい。城に潜んでいた重臣、今さっき奇襲をかけてきたメンバー。ほとんどが見た顔だったからわかる。もう一隊を率いられるような人材はいないはず。

「あなたが卑怯な手で追いやった彼が、喜んで手を貸してくれた」

「アーマンドか。死刑にしておくべきだったな」

 明日香は彼に手を借りられるよう、ペーターを説得に向かわせたのだった。

 アーマンドはバックスの裏切りを知ると、即立ち上がった。

 システイン軍の伝令兵の話によると、アーマンド隊は鮮やかに教会から敵をあぶり出し、そのほとんどを蹴散らしたという。

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