トリップしたら国王の軍師に任命されました。
11.平和、続く……か?
島を引き揚げたシステイン軍は、休む間もなく王都へと北上した。
バックスにほとんどの兵力を預けていたカルボキシル軍を撃破するのは、難しいことではなかった。島での戦いから一か月後、システインは領地を奪い返した。
三か月後、カルボキシル王は島流しの刑となった。ディケーター海賊団が、彼をはるか遠い無人島に連れていった。
「ビアンカには悪いけど、こうするしかなかった」
「彼女は承知しています。講和を破った父親が悪いのだと」
激しい戦を終え、奪い返した城の一室で、ジェイルとアーマンドは酒を酌み交わす。
静かな夜だった。まるで、この前までの戦いが嘘のように。
「申し訳なかったな、アーマンド。バックスの口車にまんまと乗せられてしまって」
バックスは人を信用させる能力に長けていた。明日香が厨房で切られた時、彼はカルボキシル軍と交渉に行っていたはずだ。バックスは敢えて言わなかったが、あれも彼の息がかかった者の仕業だったのだろう。
「もうそのことは言わないでください。命を助けていただき、感謝しております」
誰も使わなくなったアミノ国辺境の塔に幽閉されていたアーマンドは髭や髪が伸びきっていたと、ペーターが言っていた。
今は親衛隊長に復帰し、毎日きちんと身なりを整えている。その生活を支えているのは、ビアンカだった。