トリップしたら国王の軍師に任命されました。
「アスカのおかげだ。ディケーターは戦争にまで参加する気はなかったそうだ。しかし、明日香から直接戦略を聞かされた彼は、純粋にそれを『面白そうだ』と思ったらしい」
「えっ。一番最初に、海賊に戦略を漏らしてしまったのですか?」
ディケーターの了解を得なければ成功しえない作戦だった。それを明日香はシステインの誰かに相談する前に、本人にぶっちゃけた。
「そういう無茶苦茶なところが面白いんだと。俺が思うに、自分が信用されていることが嬉しかったんじゃないかね」
「海賊を信用する人って、あんまりいませんもんね……」
アーマンドがグラスの中の酒を一口飲んだ。ジェイルは苦笑する。
「ま、年間に決まった量の物資をディケーターから買うという条件は付けられたがな」
「やはり金儲けですか」
「いいんじゃないか。彼らは俺の家来じゃないんだから」
決まった主に仕えるのが普通のこの世界で、自由に生きられる海賊たちを、ジェイルは少し羨ましく感じていた。
「そういえば、お前の大叔父の予言は当たったな。『外国から来た軍師』ってのは、アスカのことだろ」
「そういうことなんでしょうね。ご本人はまだ、自分が伝説の人物になった自覚はないようですけれど」
ジェイルは笑った。明日香は明日香でいいのだ。自然で偉ぶらない彼女のままでいい。
「そろそろ解散にするか。ビアンカがお前の帰りを待ち焦がれているだろうから」
ジェイルが杯の中身を飲み干す。アーマンドは照れ笑いで返した。