トリップしたら国王の軍師に任命されました。
寝室のドアがノックされる。
明日香は緊張した面持ちで「どうぞ」と返事をした。
「遅くなったな」
寝間着にガウンを羽織ったジェイルが現れる。
「アーマンド、例の件どうだって?」
無論、カルボキシル赴任の件である。
「快諾だった。ビアンカにとっていい環境なら、あいつはどこにでも行くだろう」
「愛ね……」
「愛だな」
明日香はふふっと笑みをこぼす。アーマンドやビアンカがジェイルを恨まず、帰ってきてくれたことが嬉しい。
「これでやっと落ち着ける」
ベッドに座っていた明日香の隣に、ジェイルが腰を下ろした。明日香の胸が跳ねる。
「お、落ち着いちゃダメよ。夢は天下統一なんだから」
「いや、もう当分戦争はいらない。お前だって本心ではそう思っているだろう?」
明日香は黙った。たしかに、平和は得難いものだ。
「それに、そろそろ跡継ぎのことを考えてもらわなくては」
「あっ」
ジェイルは一瞬で、明日香の体をベッドの上に横にした。鮮やかすぎて、どうやったか明日香にもわからないくらいだ。
「これも立派な王妃の務めだぞ、明日香」
跡継ぎを望む声が日に日に強くなっていることは、当然明日香の耳にも入っている。プレシャーを感じ、明日香は縮こまった。