トリップしたら国王の軍師に任命されました。

「父さん、俺たち結婚する」

 帰って早々に、ジェイルはペーターにふたりの婚約を発表した。

 ペーターはびっくりしていたけど、「それはおめでたいことで」と、ふたりを祝福。

 この異世界では地域ごとに異なった宗教がある。それぞれの教会で行う挙式が一般的らしい。友達も親戚もいないらしいジェイルは、それを嫌がった。

「申し訳ないとは思うが……」

「ううん、いいの。たった一日のためにドレスを用意するとかもったいないし」

 街に住んでいれば、近所の住民が自然と集まって祝福に来てくれるらしいが、明日香たちにはそれもない。

(町内会とかそういうのうざったいし、気楽でちょうどいいや)

 世間から隔絶されていることに、明日香は特に不便を感じなかった。

 盛大な式は無理でも、三人でささやかにお祝いしようということになり、翌日ふたりは買い物のためにふもとの街に出かけた。

 ジェイルの馬にあいのりさせてもらった明日香は、街で彼の手を借りて降りる。

「わあ……」

 街は山とは違い、大勢の人でにぎわっていた。三角屋根の欧風住宅が並ぶ通りを抜けると、市場に辿り着いた。

 パンや果物を買い、酒を選んでいると、店のおばさんから声をかけられる。
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