トリップしたら国王の軍師に任命されました。

 ぽんぽんと優しく頭を叩かれ、明日香はうなずいた。

(うちのお母さんも、私が国際結婚していると知ったらどう思うのかな)

 考えないようにしていたのに、うっかり家族のことを考えてしまい、明日香も少し切なくなった。



 市場のにぎやかさから離れ、馬に乗って山に帰ろうというとき。

「わああああーっ」

 遠くの方から悲鳴が聞こえ、ふたりは思わず振り向いた。

「なに?」

「黙っていろ」

 ジェイルは耳を澄ませる。明日香も静かにして市場の方を見ていた。すると。

「あっ」

 思わず声を上げてしまった。並ぶ三角屋根の間から、煙が見えたからだ。

 火事かと思ったが、少し様子がおかしい。煙が瞬く間にあちこちから立ち昇る。それぞれ離れた場所で、同時に火事になったとは考えにくい。

 あっという間に火に包まれる街から逃げ惑う人々。嵐のように、ふたりに向かってくる。いったい何があったのか。明日香は異常事態に身を震わせた。

「どうした。何があった」

 ジェイルが転んだ青年を助け起こすついでにたずねる。

「わ、わからない。鎧を着たやつらが、突然街を……」

 青年も混乱している。

「……俺たちも逃げるぞ、アスカ」

「は、はいっ」

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