トリップしたら国王の軍師に任命されました。
ジェイルとペーターは、今度は騎士たちに囲まれている。
「ジェイル……!」
「アスカ、無事だったか」
ふたりとも無事だと確認すると、明日香ははじけたように立ち上がり、彼らの元に駆け寄った。ジェイルが明日香を引き寄せると、騎士たちの指揮官らしき男が馬から降り、ジェイルに向かって跪いた。
「間に合ってよかった。殿下をお迎えに参上しました。私は国王陛下の親衛隊長、アーマンドと申します」
アーモンドみたい。そう思ったけど、アスカは黙っていた。アーマンドは、アーモンド色の髪と目をしていた。長い髪を右耳の横で束ねている。
「人違いじゃないか? 俺たちは見ての通り、貧しい農民だ」
「いいえ、私たちを騙せるとお思いですか、ジェイル殿下。あなた様は、母君……国王陛下の奥方様、亡きキンバリー殿下に生き写しだ」
むすっとした顔で騎士たちをにらみつけるジェイル。明日香はわけがわからず、彼とアーマンドを交互に見つめた。
「敵国の侵攻がすぐそこまで迫っています。このままここにいるのは危険です」
明日香の脳裏に、逃げ惑う人々の顔がよみがえった。やっぱりあれは火事ではなく、敵国の攻撃だったのだ。
(隣の国と戦争でもしているのかしら)
異世界の地図を、明日香はぼんやりと思い浮かべた。