トリップしたら国王の軍師に任命されました。
「こんな田舎にまで戦火が迫るとは……」
「もちろん、今火消しに向かっています。彼らの狙いはあなただ。街に火を放ったのは目くらましにすぎない。直前に情報を掴んだ私たちは、急ぎこちらに来たというわけです」
冷酷に聞こえるアーマンドの言葉に、ジェイルは舌打ちした。
「しかし、今さらどういう風の吹き回しですか。幼い王子をこんな山奥に追放しておいて」
ペーターが前に出る。その背はしゃんと伸びて、いつもより若々しく見えた。
「あなたも一緒に来ていただきましょう。国王陛下は、今まで殿下を守り育ててくださったあなたにも、大変感謝をしております」
アーマンドはペーターの縄を解く。しかし彼の表情は緩まなかった。
「白々しい」
「本当です。国王陛下がジェイル殿下を手放されたのは、後継者争いから守るため。そして今、陛下は病の床に臥せっております。最後に顔を見に来てほしいとの仰せです。ジェイル殿下、どうか……」
アーマンドはジェイルに向かって膝をつき、背を曲げた。床に広がるマントを見つつ、明日香は思考を整理する。
(ジェイル殿下ってことは……ジェイルはこの国の王子様だったってこと!?)
ジェイルの横顔を見上げると、彼は眉をひそめて使者を見下ろしていた。