トリップしたら国王の軍師に任命されました。
親衛隊に案内され、城の中へ。直線的な外観とは正反対の、曲線を多用した内観。装飾柱に、この世界の神話や宗教をモチーフにしたと思われる色鮮やかな壁画に見惚れる明日香の腕を、ジェイルが肘で小突いた。
ところどころにいる兵士たちがジェイルや自分を好奇の目で見ているのも気づかないほど、彼女は興奮していた。
「おい、油断するな」
「だって、すごいんだもの」
螺旋階段を五階分昇るのも苦にならないほど、明日香は目を皿にして、城のあちこちを眺めて回った。
「ジェイル殿下のおなりだ。国王陛下にお知らせしろ」
一際大きなドアの前で、アーマンドが見張りの兵士に囁いた。兵士は敬礼するとすぐに部屋の中に入り、一瞬で戻ってきた。
「どうぞお入りください」
ドアは開けられ、明日香たちは中に招き入れられた。
絨毯が敷き詰められた床。部屋の中央には、大人が五人ほど眠れそうな大型ベッドが鎮座している。装飾された柱に天蓋がかけられている。
部屋の隅には医師と思われる男性や侍女たちが並んでいた。
その上に、やせ細った初老の男性が仰向けに寝ていた。ベッドの傍に近寄った明日香が痛々しく思うほど男性の顔色は悪く、手は枯れ木のようだった。
「よう来てくれた……立派になったな、ジェイル……」