トリップしたら国王の軍師に任命されました。
外国からの軍師にいつ会えるのかはわからないけど、とりあえずここは国王の期待に応えるべきだ。明日香は戸惑うジェイルの腕をがしりと掴む。
「あなたならきっと、天下統一ができる!」
「おい、アスカ」
「なに、逃げるの? お父さんのお願いを無視するの? それでもあなた、男なの?」
ジェイルは熱のこもった明日香の視線を、眉をひそめて見つめ返した。
「俺はずっと、山で暮らしてきたんだ。一応ペーターが王族としての教育をしてくれたが、実戦の経験はほとんどない」
「それが何。誰だって最初は未経験者よ」
「無茶言うな。いきなり国や国民の生命を背負えって言うのか?」
言い返されて、明日香は口をつぐんだ。
ちょっと熱くなってしまったけど、ジェイルにしてみれば、いきなりそんな重荷を背負わされるプレッシャーは計り知れないだろう。
「でも、あなたが立たなかったら、この国は崩壊する」
跡継ぎがいない場合、戦国だと配下の大名たちの争いになる。この国でも、有力者たちの内輪揉めが起きることだろう。そこを他国に攻め入られたら、終わりだ。
「甥っ子たちの後見人になった者たちの間で抗争が起きる。すると、甥っ子の誰かが犠牲になるかもしれない」