トリップしたら国王の軍師に任命されました。
国王の葬儀はしめやかに行われた。異世界でも喪服は黒らしい。喪主はジェイルが務め、葬儀が終わったあと、重要な家臣たちが城内の大広間に集まった。
新体制が整うまで、国王の死を隠そうとする意見もあった。この混乱に乗じて敵が攻めてくるかもしれないからだ。しかし明日香は反対した。
『隠してもバレるから。ジェイルの存在だって知られているし、一緒よ。なら、ちゃんとお葬式をしてあげた方がいい。余裕を見せつけるの』
甲斐の虎と呼ばれた武田信玄が亡くなる際、「自分の死は三年隠せ」と言った。しかし、すぐに情報は漏れていた。
ジェイルは明日香の意見に同調し、国王の葬儀を執り行うことに決めた。そして、現在に至る。
「前国王陛下の遺言により、新国王陛下は三男であるジェイル殿下が就任することになりました」
前国王時代からの宰相であるバックスが告げると、広間はざわめいた。総白髪をオールバックにした彼は額が広く、賢そうな印象を受ける。
皆、ジェイルの存在は知っていても、その所在を知る者はほとんどいなかった。既に亡くなっているのでは、と思われていたらしい。
「本物なのか?」
「バックス、お前の息がかかった偽物なのではあるまいな」