トリップしたら国王の軍師に任命されました。

 亡くなった国王の孫たちの後見人となった貴族だろうか。飛んでくる非難を、バックスは跳ねのけた。

「無礼者らめ! このお姿を見よ!」

 葬儀の間もほとんど黙っていたジェイルが、広間の舞台の中央に出た。フードつきの厚い喪服を脱ぎ去ると、ざわめきは一層大きくなった。

(そう、これよこれ!)

 横に控えていた明日香はほくそ笑んだ。今夜のジェイルをプロデュースしたのは何を隠そう、この明日香である。

 自給自足生活で伸びきったうっとおしい長髪を、バッサリと短く切った。シャープな顎と形のいい頭を際立たせ、聡明そうな雰囲気を出す。

 汚いマントは脱がせ、新品を着せた。その下は前国王が着ていた長いローブのような衣装ではなく、動きやすい軍服だ。それが彼の手足の長さを際立たせている。

 腰には国王の遺品である剣をさし、勇猛な印象を与える。

「アクアマリンの瞳……あの面差しは、亡き王妃様にそっくりだ」

 貴族たちは、秀麗なジェイルの姿に見入った。

(人は見た目が九割だものね。みんな、ジェイルの容姿に圧倒されているわ)

 人を率いるには、見た目も重要だ。島原の乱でキリスト教の門徒たちを率いた天草四郎は、絶世の美少年だったという。

(誰だってブサイクより、美しい人についていきたいものよ)

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