トリップしたら国王の軍師に任命されました。
それは明日香の偏見だが、この異世界でも美しさの尺度は彼女の世界と大差ないらしい。
「皆が言いたいことはわかる。長く城を離れていた俺を、信じられない者もいるだろう。だから俺に、少し猶予をくれないか。半年以内に主君として成果を上げられなかったら、この場にいる誰かに王位を譲ろう」
要はお試し期間というわけだ。
ここ、システインは左右に伸びる大陸のちょうど真ん中あたりにある。南方は海に面しており、日本で言えばちょうど愛知県のような位置だ。
東西と北方はそれぞれ他の国に囲まれており、南方の海から攻められることも全くないとはいえない。
日本史で言う将軍にあたる人物はおらず、それぞれの国は勝手に同盟を結んだり、敵対し、戦争を起こし、勝てば領地が増える。
まさに戦国時代が、この異世界で起きているのだった。それをアーマンドから聞いた明日香は、自分の血が踊る音が聞こえたような気がした。
「……では、お手並み拝見ということで……」
反対派が矛を収めると、賛成派が大きく拍手した。
「ところで、そちらにいらっしゃる女性は?」
年配の女性が明日香をにらむようにみつめている。喪服だというのに豪華さを感じる、黒レースをふんだんにあしらったドレスを着ている彼女は、亡くなった兄王子の母親だろうか。