トリップしたら国王の軍師に任命されました。
東に騎馬隊を誇る国があると聞き、明日香は既に平原を遮るように、長い馬防柵を建設させておいた。ジェイルは迅速に兵を出陣させるよう命令する。アーマンドはジェイルの命令を伝えに行った。
「アスカはここで待っていろ。大丈夫だ。お前と何度も打ち合わせした通りにやればいいんだろう?」
ジェイルは明日香を安心させるように微笑みかけるが、明日香は首を横に振った。
「いいえ、私も行くわ」
「何を言っているんだ」
途端に表情を硬くするジェイル。この国では、女性の兵士はいない。女性が戦場に赴くなど、もってのほかだと思っているのだろう。
「だって、私は軍師よ。軍師が城で待っているだけなんて、おかしいでしょ」
「それはそうだが……」
明日香はおもむろに、重いドレスを脱ぎ捨てる。
「おい」
焦ったジェイルだったが、ドレスの下から出てきたものに、ぽかんと口を開けた。
明日香は男装していた。軽い軍服に身を包んでいる。
「あと、これこれ」
明日香はジェイルの玉座の後ろから、謎の棒を取りだした。黒い柄の先に、厚紙を細く切って房にしたものが括りつけられている。
「なんだそれは」
「知らないの? 采配よ。私の国の軍師はこれを持って指揮するの」