トリップしたら国王の軍師に任命されました。
それを持った明日香は興奮したように頬を紅潮させている。しかも、なぜか左目に黒い眼帯まで着け始めた。
「なぜそんなものを付ける。見にくいだろう」
「なぜ? 気分よ、気分!」
武田信玄の天才軍師、山本勘助。そして独眼竜と呼ばれた伊達正宗。眼帯キャラは一割増しで格好良く見える。明日香は密かに眼帯と采配に憧れていたのである。
「さあ、行くわよ!」
「待て、アスカ」
気合を入れて駆けだそうとする明日香を、ジェイルがふわりと後ろから抱き寄せた。
「戦場は楽しいところじゃない。命のやりとりをする場所だ。俺はお前に、そんなものを見せたくない」
明日香を抱く腕に力がこもる。
「わかってる。私だって、本当は怖い」
ジェイルの腕に抱かれ、明日香は呟いた。
「でも、他人に任せて高みの見物なんてわけにはいかないわ。この国の人たちが私の作戦で戦うんだもの。私はしっかり、それを見ておかなきゃ」
「しかし」
「しかしも足利氏もない!」