トリップしたら国王の軍師に任命されました。

 他人に戦争をさせておいて、自分だけ安全な場所で隠れているわけにはいかない。

「あなたが感じる痛みを、私も一緒に受けるわ」

 戦場に立つジェイルは、凄惨な場面を目の当たりにすることだろう。

(彼ひとりに、重荷を背負わせたりしない)

 ジェイルがふっと腕の力を弱めた。明日香が振り向くと、彼はこつんと額を合わせてくる。

「お前ってやつは……」

 まぶたを閉じ、何かを考えているようだ。明日香は何も言わずにじっと待つ。けれどそれは一瞬だった。ジェイルはすぐに目を開き、明日香を真っ直ぐに見つめる。

「ならば、共に行こう。地獄の果てまで道連れだ」

 腕を解き、明日香の手を引く。その目には、支配者だけが持つ強い光が宿っていた。

「望むところよ」

 二人は手を繋ぎ、歩き出す。彼らを待つ、戦場へ。

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