トリップしたら国王の軍師に任命されました。

 馬防柵の内側には、およそ三千の兵士が集まっている。少し後退したところに、二万弱の兵も。

「ものすごい勢いで向かってきている」

 望遠鏡で平原をにらむ明日香に見えるのは、およそ一万はあろうかという圧倒的な騎馬隊だった。しかしこれも第一隊で、敵はまだまだいると思われる。

 大地を震撼させるような蹄の音が腹に伝わってくる。兵士たちの顔が強張った。

 それもそのはず、彼らは明日香の命令により、今まで着ていた全身を覆う甲冑を脱がされたのだ。

 今システインの兵士たちが纏うのは、明日香と同じ軽い軍服。その上に手甲、脛当てを付けさせた。胴には鎖帷子が仕込まれている。頭には兜ではなく、鉢金を巻かせた。

 手甲や脛当ては、ディケーターに集めさせ、売ってもらったものだ。海賊は大げさな甲冑は着こまず、軽い防具で身を守る。だからあのとき、明日香はディケーターにこの世界で最も軽い防具を授けてもらうため、後を追ったのだ。

「大丈夫よ。私の言う通りにして。敵をじゅうぶん引きつけるの」

 柵のすぐ内側には、鉄砲を持った千の兵が鉄砲を構えていた。仕入れた銃を改良し、量産するまでに時間がかかった。訓練にはじゅうぶんな時間がなかったが、こうなったらやるしかないだろう。

 
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