トリップしたら国王の軍師に任命されました。
「ダメだ、敵は奇妙な武器を持っている。一度退こう」
提案する男に、追加兵は悲痛な声で叫んだ。
「ならん。プロリン城が奪い返されてしまったのだ。もう後戻りはできない」
「なにっ」
明日香には敵のやりとりは聞こえなかったが、一瞬緩んだ攻撃の波間を読む。敵は隊列を組みなおし、なおも馬防柵を乗り越えようと、突進してくる。
「うまくいったようね」
「別動隊がやってくれたな」
ジェイルがホッとしたように呟いた。
実は、鉄砲隊をメインにした本体とは別の隊を、プロリン城奪還に向かわせていたのである。その数およそ五千。
別動隊に城を奪還された敵軍は、前を鉄砲隊、後ろを別動隊に挟まれたことになる。退くに退けなくなった敵は、突き進むしかない。
何度も向かってくる敵を、鉄砲隊が何度も撃退する。たまに柵を乗り越えてくる猛者もいたが、鉄砲隊の後ろに控えている槍隊にあっという間に囲まれてしまった。
──戦闘が始まってから八時間後。
「終わった……」
ジェイルが呟いた。
馬防柵の向こうは、斃れた人馬で埋め尽くされていた。硝煙の匂いと死臭が同時に漂ってくる。