トリップしたら国王の軍師に任命されました。
1ヶ月後。
「そろそろ俺たち、結婚してもいい頃じゃないか?」
2年ほど付き合った彼女に言うように、ジェイルが呟いた。ちょうどティータイムだったので、アスカは紅茶を噴き出しそうになる。
「そ、そうね」
この前の【似非長篠の戦い】の勝利で、ジェイルは国民や周辺諸国に新国王として認められた。
アスカも軍師として名が広まり、国民の人気も集まりつつある。しかし。
(ちょっと忘れてた……)
アスカは戦国の和睦交渉に目を奪われていて、結婚どころではなかった。
交渉自体はアスカの領分ではなく、バックスやジェイルが進める。だが、アスカはそれが気になって仕方なかった。
つい先日、システインに降伏し、支配下に置かれることとなったカルボキシルから王女が送られてきた。十代後半の、アスカより若い王女だ。
「今後は裏切りません」という意思表示だ。戦国時代でも、属国が人質を差し出すことは普通だった。
「お二人とも国民に認知されましたし、良い頃合いでしょう。早速明日人を集め、婚儀の日を決めることにしますか」
「ああ、頼むぞペーター。あ、先にバックスに相談してくれ。あいつうるさいから」