トリップしたら国王の軍師に任命されました。

 明日香は二人のやり取りを、複雑な思いで見つめていた。

(そう簡単にいくかしら……)

 彼女の心配は、翌日的中することとなる。

 重臣たちが集まる朝の謁見の時間、広間の中は騒然となった。

「反対でございます!」

 案の定、力を持った貴族たちの中で結婚反対派が出てきた。そもそも、ジェイルの即位にすら反対だった者もいる。

「ここは国内の令嬢と結婚していただき、貴族たちの結束を深めた方が良いかと」

 自分の娘をジェイルに嫁がせ、家の力を強化したい者たちはそう主張する。

 一方、アーマンドは全く別の意見で貴族にもジェイルにも反抗した。

「いえ、友好国の王女を正妻にすべきです。姻戚関係を結べば、相手の国が今後裏切ったり謀反を起こす可能性は低くなる」

 彼の意見はこれでもかというくらい正論で、誰も反論できなくなる。

(そんなこと、言われなくてもわかっているわよ)

 戦国時代では政略結婚が当たり前だった。国の力を強め、敵を少なくするにはそれが一番いいに決まっている。

「このたび人質としていらしたカルボキシルのビアンカ王女様はいかがでしょう。それは美しい女性です。王族らしい教養と気品を兼ね備えている」

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