トリップしたら国王の軍師に任命されました。
アーマンドはちらっと明日香を見た。
(庶民らしく、気品がなくてすみませんでしたね)
明日香はじとっとアーマンドをにらみつけた。彼はそんな視線に気づかないフリをしている。
「いや、俺はアスカ以外を妻にするつもりはない」
ざわざわしていた広間が静まり返った。決然と言い放ったジェイルの声が、全員を黙らせたのだ。
「皆の者、忘れたのか。彼女がいなければ、我が国の勝利はなかったのだ」
ジェイルは玉座から立ち上がり、怒鳴るように重臣らに語りかける。
「カルボキシルだけではない。周辺の小国には先日の戦の噂を聞きつけ、戦をせずに我が国と手を結ぶと申し出てきたところもある」
これは本当のことだ。最新の武器を短期間で量産し、名高いカルボキシルの騎馬隊に対して完全勝利を収めたシステインを脅威に思う国は少なくなかった。
「彼女の他に、このようなことを成し遂げられる女性はいるか? 貴殿の娘らもビアンカ王女も皆、美しく気品に溢れていることだろう。しかし俺が望むのはそのような女性ではない」
いつの間にか全員が反論を忘れ、若き王の言葉に耳を傾けていた。
「俺は、どんな時も共に歩んでくれる女性を求めている。アスカこそ、国母に相応しい」
「あの、それは言いすぎ……」