トリップしたら国王の軍師に任命されました。
 異世界から来た軍師が、国王の花嫁になることに決まった。

 その知らせは瞬く間に国中を駆け抜け、国民は歓喜に沸いた。

「アスカさまのような賢い女性が国母となってくださるなら、システインは安泰だ」

 このような声が多く、明日香はひとまずホッとした。

 政略結婚を望む人たちからは歓迎されなくても、国民が歓迎してくれるならそれでいい。そう思い始めた。

「まあ、今後側室を持たないとは限らないし……」

 他の相手をすすめる貴族たちも、国民の歓びムードに押され、一旦矛をおさめた。

 こうしてジェイルと明日香の結婚準備が始められることになったのである。

「母国語が書けないと話になりません。そして他の国の言語や歴史、こちらの世界の作法も一通り学んでいただきます」

 ペーターが無慈悲に告げた。

「ええ~」

 就職しても資格や試験の勉強をしなくてはならない職場が嫌だった。こっちの世界に来て、もう勉強しなくていいぞと思っていたのに。

 明日香はひとり、図書室に閉じ込められることとなった。朝からしょんぼりと座っていると、ペーターが顔をのぞかせた。

「アスカさま、教師を連れてきました」

「失礼します」

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