トリップしたら国王の軍師に任命されました。
ペーターの後ろから現れたのは、明日香より少し若い美女だった。金の糸を束ねたような見事な金髪。緑色の瞳は大きく、つんとした鼻が全体の印象を引き締めて見せる。
「カルボキシルのビアンカ王女です」
「あっ、あなたが!」
明日香は慌てて立ち上がった。
(なるほど、アーマンドが褒めちぎるはずだわ)
洋画に出てくるような、本物のお姫様。同じ女性であるはずの明日香も、しばらく見惚れてしまった。
「彼女はこちらの言語をマスターしています。そしてカルボキシルの歴史や言語はもちろん、王女として叩き込まれたマナーや知識がある」
「ほほー」
生まれつきの王女の風格に、明日香はひがむことすら忘れた。
ただ、明日香には一つだけ懸念がある。それは、明日香がビアンカの祖国の軍を打ち破った軍師だということだ。
「ええと……ビアンカ王女はいいの? 嫌ならムリしないで、ハッキリ言って」
遠慮がちに口を開くと、ビアンカはゆっくりと首を横に振る。
「父が先に喧嘩を売ったのですもの。あなたは降りかかってきた火の粉を振り払っただけ。恨む道理はありません」
「じゃあ……」
「暇な身の上ですもの。私で良ければ、教師役を喜んでお受けしますわ」