トリップしたら国王の軍師に任命されました。
人質は、衣食住に困ることはないが、自由もない。若い彼女には酷なことだと、明日香は少し胸を痛めた。
「よろしくお願いします」
今からまったく知らない言語を習得できる気は全然しないけど、とりあえずやってみるしかない。
「お願いします。しかし、驚きましたわ。システインの軍師が、まさかこんなに可愛らしい女性だったとは」
まるで花が咲くように微笑むビアンカ。明日香は照れ笑いで返し、そっと右手を差し出す。ビアンカはそれを握った。柔らかく、細い手指だった。
こうして、明日香はビアンカから様々な指導を受けることになり……ひと月ほど、それは順調に進んでいた。
(ビアンカって、教師の才能があるわ。地球に来て家庭教師とかやったらいいのに)
勉強が嫌いな明日香に根気よく教え続けるビアンカ。教え方がうまいのか、明日香は彼女が言っていることをすんなりと理解できた。練習するしかない言筆記は、まだ苦手だけれど。
しかしひと月ほど経ったとき、事件は起きた。