トリップしたら国王の軍師に任命されました。
「ないとはいえないけど、アミノ国もこちらに人質を送ってきている。そう簡単に裏切らないと思いたいわ」
「私も同意です」
ビアンカ王女のように、アミノ国からは幼い王子が人質になっている。王子はジェイルの甥たちと仲良くなり、穏やかに暮らしている。
バックスやペーター、重臣たちも明日香に同意した。
「よし。では、進軍の準備にとりかかれ」
「はっ」
詳しい戦略は現地に着いてから、ということでジェイルたちは救援物資を積みこみ、アミノ国に向かうことになった。
「お気の毒ですわ、アスカさん。せっかく花嫁になる準備を進めていたというのに」
しばらく国を開けることを報告すると、ビアンカ王女は肩を落とした。
「仕方ないわよ」
(むしろ、勉強から解放されてホッとしているとは言えない……)
自室で荷造りを始める明日香を、ビアンカは複雑な表情で見つめる。
「どうしてアスカさんは女性なのに、自ら戦地に赴こうとなさるの? しかもどこか嬉々として」
「えっ」
嬉々としている自覚はなかった明日香は、持っていく服を畳む手を止めた。
「……うーん……。私、じっと座っているのが苦手なのよね。あと、歴史が好きなの」
「歴史が?」
「歴史に名を刻む戦いを、この目で見ておきたいの。それに何より、私はジェイルの軍師だから」