トリップしたら国王の軍師に任命されました。
ビアンカは明日香の言葉を、ゆっくり咀嚼しているように、黙っていた。が、やはり理解はしてもらえないようで、彼女は首を傾げた。
「愛しい人の傍にいたい気持ちはわかりますが……」
だからといって、自ら危険に踏み込む女性は、この世界にはそうそういないらしい。それはそうだろう。
「くれぐれも、お気をつけて」
そう言ってくれるビアンカに、明日香は小さくうなずいた。
至急軍備を整えたシステイン軍は、約二万の兵を率いて、アミノ国に向かって出発した。
「よくおいでくださいました!」
どうやら書状の内容に嘘はなかったらしく、アミノ国はすぐに王城の門を開けてジェイルたちを歓迎した。
城の中の空気はどんよりとしていた。中にいる兵士も文官も使用人も、痩せて元気がない。農民が兵士として取られ、農作物の供給が追い付かないということだった。
今の状態で攻め込まれたら、元気のないアミノ国は窮地に立たされる。
「早く決着をつけなくちゃ」
おそらく、敵も同じような状態にあることだろう。システインは兵農分離されているから、兵士はみんな職業軍人。農民は農作業に従事できる。救援物資の穀物を渡すと、アミノ国の人たちは泣いて喜んだ。