トリップしたら国王の軍師に任命されました。
「攻め込まれる前に攻めるしかない。ですが、相手が城から出てこないと、戦いたくてもできません。ここは兵糧攻めでいくしかないかと」
アーマンドの進言に、明日香は同意した。
「私もそう思う」
「うん。お前たちの言う通り、それしかないな」
借りた城の一室で、重臣たちの会議が開かれる。地図を見ながら、ジェイルがうなった。
アミノ国のことを考えると、早々に決着をつけたいところだ。しかし兵糧攻めは基本、長期戦だ。戦国時代にも、兵糧攻めをされても二年近く耐えた城もある。
ジェイルたちもその間ずっとアミノ国にいるわけにはいかない。
「相手にどれくらいの蓄えがあるのか……」
「ジェイル、地図を見せて」
考え込むジェイルの横で、明日香は敵の王を含める主戦力が籠城する城周辺の地図を広げる。
「この城は低地にあるんですね?」
元の世界と地図記号も違うので、明日香は一緒にいたアミノ国の王に確認する。
「はい、そうです。周りを沼や湿地に囲まれ、大きな川も近くにあります。馬は足を取られ、鉄砲は火縄が湿ってしまう」
たしかに、城の南東に、大きな川が流れている。地盤はゆるいだろうが、敵からは攻めにくい、守りに堅い城だ。
「時間をかけずに、城を落とすには……」
明日香があごに手をあてて考え込む。皆彼女の発言を待っているようだった。
「よし、これでいきましょう」
やがて、明日香は閃いたようにまばたきし、顔を上げた。