トリップしたら国王の軍師に任命されました。
籠城する覚悟を決めた彼らに、思いがけない現実が襲ってきたのは十二日後のことである。
「なんだこれは!」
望遠鏡で城の周囲を見渡した見張りの兵士が、震える声で叫んだ。
システイン国の兵士が川の付近で何か工事をしているのは知っていたが、それが堤防だとわかったのは、ごうごうと城に流れ込んでくる水の音がしはじめてからだった。
「川の水が流れ込んでくる! 食料を避難させろ!」
グアニジムの城内はパニックに陥った。前日に降った雨で増水した川の水がシステイン兵によって築かれた堤防によって城の中に引き込まれたのだ。
堤防の上に作られた見張り台から、ジェイルと明日香たちは城の様子をうかがっていた。
「なんと見事な……」
瞬く間に冠水していく城を見て、アーマンドが感嘆した。
「数時間で、あの城は陸の孤島になる。もう補給は船でしかできないけど、そもそもこの山奥に船はない」
地上の補給ルートはいくら閉鎖しても、監視の目をかいくぐっていく者がいる。しかしもう船でしかいけないとなれば、全ての補給ルートが消滅したも同然だ。
「援軍も、手出しできないな」
「そういうこと。衛生状態も悪くなって敵の気持ちが萎えれば、降伏も早くなる」