トリップしたら国王の軍師に任命されました。
これは、戦国時代に豊臣秀吉が行った、備中高松城の水攻めに倣った作戦である。
(黒田官兵衛ってやっぱりすごいのね)
豊臣秀吉に仕えた高名な軍師、黒田官兵衛の策を再現することができ、明日香は高揚していた。
短期間で堤防ができたのは、破格の給金で周辺の農民を雇ったから。グアニジムの農民たちは愛国心より金と食料を、喜んで選んだ。
そうして自然の高低差を活かしながら堤防を築くうち、幸運にも雨が降ったのだ。
「やはりお前は最高の軍師だ」
ジェイルが笑顔で明日香の肩を抱く。誰もそれを咎める者はいなかった。
(お願い、すぐに降伏して……)
高松城の水攻めでは、毛利家の援軍も何もできず、城主の清水宗治が自害することとなった。
しかし、ジェイルは国王の自害に固執することはない。降伏して人質を差し出せば、それで戦いが終わる。
一日後、巨大な湖の上にぷかりと浮いているように見える城の物見の塔。そこに、白旗が掲げられるのが見えた。こっちの世界でも、白旗は降伏を意味するらしい。
明日香はそれを、ジェイルと一緒に堤防の上から確認した。
「さすがアスカさまだ」
「先の戦いの勝利は、まぐれではなかったのだ」