トリップしたら国王の軍師に任命されました。
(お城ウェディングを夢見ていたけど……礼拝堂もすごい)
戦国オタクの明日香としては、新郎には式服と烏帽子をつけてもらい、自分は白綾の小袖と打掛で式を挙げることを夢見ていた。実際にそういう要望に応えてくれる式場まで調べてしまった。相手もいないのに。
(まさかこんなに大勢の前で結婚式を挙げることになるなんて)
日本にいたときは、結婚できたとしたら、ふたりきり、もしくは身内だけの小さな式に憧れていた。上司を呼ぶのは面倒くさかった。
ジェイルの妻になると決めたときも、ペーターを含めて三人でひっそりお祝いできたらそれでいいと思っていた。
しかし実際は、何百人という貴族が着飾り、明日香に注目している。
緊張の限界で倒れるかと思ったけど、明日香はなんとかジェイルの待つ祈祷台の前までたどり着いた。
(うわあ……)
ペーターからジェイルへ明日香の手が渡される。この日初めて見るジェイルの姿に、明日香は目を奪われた。
黒髪の上に乗った王冠。群青色の軍服にはいつも着けていない王族の紋章が。羽織ったマントは白く、金の糸で細かい刺繍がされている。
(やっぱり彼は山男なんかじゃない。生まれついての王族だわ)
彼の手に乗せた自分の手が震える。この人の妻になることが信じられなくなりそうだった。