トリップしたら国王の軍師に任命されました。

 式のあと、明日香は一度風呂に入れられた。「入った」ではなく「入れられた」というのはつまり、侍女たちが風呂に侍っていたという意味。

 何度も「自分でできる」と言っているにも関わらず、侍女たちは風呂場にずかずかと入り込んで来て、明日香の体を丹念に磨き上げた。

 それが彼女たちの仕事なのだから仕方ないのだけど、生まれつきの王族ではない明日香は、他人に裸を見られることに抵抗があった。

「ほら、そんな顔をしていては台無しですわよ」

 すとんとした夜着を着付けるビアンカは、ふくれっ面の明日香をたしなめた。

「わかっているわよ。もうこんなことは今日限りにしてもらうけどね」

「アスカさまは不思議なお方ですわねえ。侍女に裸を見られたくらい、何を思い悩む必要があって?」

「私の世界では常識が違うのよ」

 ビアンカは生まれた時から周りに傅かれて育っている。侍女のことを同じ価値のある人間とも思っていないのだろう。いわば侍女は虫と同じ。虫に裸を見られても恥ずかしくない。そういう道理だ。

 しかし一般人の明日香はエステにも温泉にも行ったことがないので、人前で裸になることはとても抵抗がある。

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