リアル人生ゲーム(裏)
そこに、未知瑠が立っていた。
包帯で顔をぐるぐる巻きにした未知瑠が、鏡ごしに私を見ている。
「ど、どうして?」
振り返ると同時に、未知瑠が一歩、詰め寄ってきた。
「いい笑顔」
そう言うと、私の頬に手を伸ばしてくる。
「__未知瑠?」
「私も、光莉みたいに笑いたい」
未知瑠の指先が頬に触れる寸前、その手が引っ込んだ。
「でも私、笑えないんだよね」と、包帯に手をかける。
端切れを摘んだ指先が、未知瑠の顔を一回りした。
「な、なにを__?」
なにをするのか、なにがしたいのか、私はきかなくても分かっていたが、きかずにはいられなかった。
けれど未知瑠は答えることなく、包帯をどんどんと解いていく。
蛇のようにとぐろを巻いた白い包帯が、足元に広がっていた。
髪が露(あら)わになり、耳が見え、やがて__。
顔が見えた。
「っ‼︎」
出かかった悲鳴を、なんとか飲み込む。
口に手を当てて後ずさったが、洗面台が腰を打つ。
私は思わず、背を向けてしまった。
未知瑠の顔から。
けれど、目の前には鏡がある。
鏡の向こうで、未知瑠の口角が持ち上がった。
顔の右半分が腫れ上がり、見るも無残に紫色になっている未知瑠が__。
「ねぇ、光莉。私、ちゃんと笑えてる?」