リアル人生ゲーム(裏)
なにもかもが、スローモーションに見えた。
ナイフを持つ手を引き、私の胸に向かって突き刺そうとする未知瑠。
顔半分が岩のようにゴツく、憎しみに満ち溢れている。
私は逃げることもできず、ただ突っ立っていた。
そこに__。
なにかが突っ込んできたんだ。
ううん、私は分かっていた。
それが、彰だということを。
「光莉‼︎」
そんな声がしたからだ。
彰が私の前に、大きな影となる。
私を抱きすくめるように、未知瑠に背を向けた。
「うっ!」
切ない声が漏れた。
「__彰?」
身をよじって、無事を確かめようとするが、彰の抱擁はどんどん強くなっていく。
どんどん。
どんどん。
「は、離して?」
「光莉」
「彰、離してよ」
自分の声が、泣いていた。
彰が強く強く抱きしめるのは、私に縋(すが)っているからじゃないのか?
命を手放さないよう、私を離さないんじゃ__?
その時、けたたましい悲鳴が轟いた。
誰かが、トイレに入ってきたんだ。
「さ、刺されてる!」
彰の背に、ナイフが深々と突き刺さっているのを私が知ったのは、しばらく後だった。
ずっと、ずっと彰を抱きしめていたから。