リアル人生ゲーム(裏)


「は、払えばいいんでしょ、払えば!」


威勢よく財布を出してはみたが、千円札1枚しかない。


確か万年筆は、1万円の値札がついていた。


「てーかさ、私が盗った証拠でもあるわけ?」


強めに出てみた。


いざとなれば、ボケたばばあを押し切るなんて簡単だ。


だが、老眼鏡をかけた婆さんは膝の上のパソコンを覗き込んでいる。


パソコンなんかできないでしょ?


フッと鼻で笑うと、取り出したスマホをケーブルで繋いだ。


スマホを素早く操作する手際は、手慣れていた。


「ほれ」と、パソコンを私の方に向けてよこす。


そこには__私が万年筆を万引きした瞬間がしっかりと動画で映し出されていた。


嘘でしょ?どこに監視カメラあるのよ?


きょろきょろと店内を見回したが、なんの変哲もない文房具屋だ。


「まだあるよ」


にんまり笑った婆さんの声に、再びパソコンの画面に目をやると__。


えっ、なんで?


そこには私が写っていた。


万引きをする、私が。


でもポケットに忍ばせたのは、万年筆ではなく手帳だ。


それは、先月に私が万引きした映像だった。


どうして?


一体、どうして?

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