リアル人生ゲーム(裏)
一瞬、ほんの一瞬、ぞくっとした。
顔はにやついていたが、白く濁った目だけは笑っていなかったからだ。
「でももうゴールしたから。なにか似たやつないのかと思って。ちょっとくらい高くても買うよ」
100万円したっていい。
あんな夢のようなゲームなら、安いもんだ。
けれど、婆さんはくくくっと喉の奥で笑う。
「そうかい、もうゴールしたのかい」
「なによ、ゴールしたし」
口を尖らせて言った。
昨日、最後のサイコロを振った。私はゴールに届かなかったが、未知瑠が④を出した時点で、ゲームは終わったんだ。
天使も「みんな、お疲れさま」と言っていた。
ゴールの上で、私たちは抱き合ったんだ。
本当にゲームが始まった時は驚いたが、良いことばかりだった。
サイコロを投げれば、幸せが転がり込んでくる。
ゲームの世界のことが、現実で起きるんだ。
しかも、良いことばかり。
もう終わってしまうことに惜しみつつ、私たちは解散した__。
「あれは特別なゲームだからねぇ」
婆さんの声で、我にかえる。
くくくっ、と喉の奥で笑っている婆さんからは、もう何も出てこないようだ。
それならそれで、こんなところ用無しだし。
私はさっさと【順弦堂】を出た。
だから聞こえなかったんだ。
婆さんの言葉が。