リアル人生ゲーム(裏)
「ひと粒でも食べたら、もう2度といじめないって言ってるのに、食べようとしないのよね」
由佳はひと粒、指で摘んで友美の口元に押しつける。
けれど、友美は口を閉じている。
ぐいぐいと押しつけられても、絶対に口を開こうとしなかった。
亮平のためだ。
友美は、亮平のために口を閉じているんだ。
「やめなさいよ!」
私は、由佳の肩を突いた。
よろけて尻もちをついた由佳が、怖い顔で私を睨む。
周りの取り巻きに支え起こされ、なにも言わずに教室を出ていった。
「大丈夫?」
「うん。ありがとう」
友美がそう口にした時、未知瑠がやってきた。
わずかに、はにかんでいるように見える。
「未知瑠、もしかして?」
「あっ、うん。まぁ」と、視線が泳いでいる。
「やったじゃん!」
「うん、でもさ」
「なによ?片思いが叶ったんだから、もっと喜んだら?」
「でも、みんなご飯も食べてないし。それは私もだけど、なんだか、私1人が浮かれても悪いっていうか」
「そんなの気にすることないし。未知瑠、おめでとう!」
「光莉ー!」
やっぱり相当、嬉しかったのか、未知瑠が抱きついてきた。
悪いことばかり続いていたが、少しだけ心が軽くなったんだ。
ほんの少しだけ。