リアル人生ゲーム(裏)
「未知瑠、おはよう」
言葉にすることなく、目で挨拶をする。
考えることは同じなのか、大きなマスクをしている未知瑠が頷く。
風邪だということにすればいい。
喉を痛めたから声が出ない。
それで1日を押し切ろう。
すると、教室にいた亮平も彰も、板垣も友美までマスクをしている。
ゲームの参加者全員が、同じようにマスクをしていたんだ。
そしてそれは、古典の時間に起こった。
「仁科さん、次、読んで」
目が合わないよう俯いていたのに、当てられてしまった。
古典の先生は、年増のおばさんでなにかと口うるさい。
私は立ち上がったが、あらかじめ用意してあったノートを突き出した。
「風邪で声が出ない?そうなの?それじゃ仕方ないわね」
意外にもあっさりと引き下がってくれてホッとする。
けれど、私が席に着くと同時に__。
「じゃ、小山さん」と未知瑠が当てられた。
えっ⁉︎と目を見開いて驚いているが、立ち上がると私を指差す。
自分のマスクと私を交互に指差して、伝えている。
自分も声が出ないのだと。
「あなたも声が出ないの?2人揃って?」
眉をひそめた先生が、教室内を見回している。
なにかを見つけた顔をした。
「じゃ、佐野さん」
友美の名を呼ぶ。
マスクをした友美を。