恋の宝石ずっと輝かせて
「トイラ久しぶりだな。オヤ、どこか調子でも悪いのかい。なんだか苦しそうだが。変なものでも食べたのか」

 黒い影は冷ややかに笑う。

 しかし、すぐに邪悪な目を向け、出し抜けに手を前に突き出した。
 その瞬間オレンジ色の光線がトイラを襲った。

 トイラは飛び上がりなんとか交わすが、着地するとき足がよたついていた。

 光線が当たった地面はえぐれて焦げ付いていた。
 まともに浴びたらダメージを食らうところだった。

「くそっ、こんなときに ……」

 トイラは歯を食いしばり黒い影に飛び掛った。

 黒い影は、すっーと後ろに下がって、トイラから遠ざかる。

 黒豹のトイラはユキを背にして立ちはだかり、黒い影に向かって威嚇する。

 しかし目がかすんで、まともに立っていられない。

 必死に気力を奮い起こすも、ふらつきが収まらなかった。

「こんなにも簡単にトイラをやっつけられるなんて、私はなんてついているんだ」

 また手を前に掲げたときだった。

 後ろから大きな犬が飛び掛り、黒い影の背中に爪を立てて引掻いた。

「うっ、お前はキース」

 そこには銀色に輝く毛皮をまとった狼が勇ましく立っていた。

「ジーク、お前の思うようにはさせない。お前をぶっ潰してやる」

 狼の姿のキースが叫んだ。

 キースが遠吠えをすると、どこからともなくまとまった数の犬がやってきた。

 多勢に無勢。
 ジークは今にも飛び掛ってきそうな犬たちを見て断念する。

「くそ、もう少しだったものを」

 ジークと呼ばれた黒い影は夜空に浮かび、闇に溶け込むようにすっと消えた。
< 100 / 360 >

この作品をシェア

pagetop