恋の宝石ずっと輝かせて
 朝の陽光が差し込み、ベッドで寝ていたユキが目覚める。

 起き上がろうとするが、体のあちこちがいたくてうめき声を上げた。

 胸も少しチクチクし、服を引っ張ってそこに目を向けると、痣が少し大きくなっていることに気がついた。

 ユキは不可解だと、眉間に皺を寄せ考え込んだ。

「まるで月が満ちていくようだわ。それになんで私、服も着替えず寝てたんだろう。あの時、自転車に乗って……」

 そこまで言いかけたとき、トイラが病気だった事を思い出し、一目散に起き上がった。

 勢いで痛む体のことも忘れ、自分の部屋から飛び出すと、向かいのトイラの部屋にノックもせずに入っていった。

「トイラ! あれ? いない」

 すぐさま階段を駆け下りて、居間に飛び込めばトイラとキースが何事もないようにソファーに座ってテレビを観ていた。

「おはよー、ユキ」

 キースが元気に声をかけてくる。その隣でトイラも気だるそうに「おはよう」と言った。

「トイラ! もう大丈夫なの。お腹は痛くない?」

 走って駆け寄るユキ。

「ああ、大丈夫さ。言っただろ、一晩寝たら治るって」

「よかった」

 ユキは安心して涙腺が緩んでいた。

「何も泣くことない。大げさでうるさいな」

「だって、あんなに苦しそうにしてたら心配になるじゃない。だから私、お医者さんを呼びに行こうとして自転車に乗って……あっ!」

 ユキは突然大きな声を出した。

 トイラもキースもユキがどこまで覚えているのか気にしていた。

< 102 / 360 >

この作品をシェア

pagetop