恋の宝石ずっと輝かせて
第四章 変化

「申し訳ないけど、勝手に朝食を食べてくれる? 今からシャワー浴びたいんだ」

 時計を気にしながら、ユキは急いでバスルームへと駆け込んだ。

 ユキの記憶が曖昧になってる事を知ってほっと一息つき、トイラとキースはキッチンに入って、朝食の準備をし始めた。

「どうやら、昨日のことは覚えてないようだね」

 戸棚から出したシリアルの箱を手にしてキースが言った。

「キースの小細工なんだろ」

 トイラは棚からボールを出し、キースの持っていたシリアルの箱を奪った。

「まあね。すでに気を失っていたみたいだから、ほんの少しだけ弄るだけで上手くいったよ。あまり『忘れ粉』は使いたくないからね。ただでさえ、ユキは記憶を失ってるから、コントロールするのは気が引ける」

「しかし、ジークのことは今は遠ざけておきたい」

 トイラは箱を開けてシリアルをボールに入れだした。

「いつまで遠ざけていられるかだけど、昨日は噂をすれば影だったね。しかもトイラの体調の悪いときにやってくるなんて」

「ジークは俺たちの周辺を偵察していただけだと思う。偶然が重なってユキと出くわしてしまった」 

 シリアルの箱を持つトイラの手に力が入って、箱が歪になっていた。

「でもまだ簡単にはいかないと思ったはずだろうね。今度はどんな手をつかってくるんだろう」

 キースがトイラからシリアルの箱を奪い返す。

「きっと、卑怯な手さ」

 トイラが静かに言った。


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