恋の宝石ずっと輝かせて
 学校の校門に来れば、そこでモジモジとしながら仁がユキを出迎えた。

「おっ、おはよう、春日さん」

 すでに友達気取りに馴れ馴れしい。

 トイラは気に食わなさそうにちらりと一瞥する。

「おはよう新田君。昨日はありがとうね」

 仁に寄ってこられると、ユキもそれに合わせて肩を並べて歩き出した。

 あっという間にふたりの世界になり、トイラもキースも中に入れず、距離を開けて様子を見ていた。

「ライバル登場って感じだね」

 キースがトイラをからかう。

「あの優男はユキの好みじゃない」

「それって、ぶっきら棒のトイラが好みだっていいたいのか」

「そうじゃない。ユキはもっとはっきりと物を言う男らしい奴がいいんだよ」

「だから、それってトイラじゃないか」

 遠まわしに自分に惚れていると意味しているのに、それを認めないトイラにキースは嫌気がさしてきた。

 トイラは明らかに仁を敵視していた。

 好きなら素直になればいいのに、トイラは自ら全てを壊して偽り続けている。

 心は嘘をつけないのに、トイラは不器用すぎて自分でも何をしているのかわかっていない。

 キースはそれを正そうとするのに、トイラは聞く耳持たずなのがいらつく。

「おい、トイラ、耳と手が野生になってるぞ」

 キースに指摘され、尖る耳を咄嗟に大きな猫の手で押さえるトイラ。

 それを見ながら、キースはやってられないとため息をついた。

 元に戻すまで、トイラは落ち着くために何度も深呼吸をしていた。
 
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