恋の宝石ずっと輝かせて
 まだ生徒が誰も来ていない早朝の学校。

 今日もまた何か起こるのだろうかと、軽く汗を掻いた額をぬぐい、不安で校舎を見上げる。

 下駄箱でユキが上履きに履き替えようと片足を入れたその時、痛みを感じた。

 脱いで確認すると、画びょうが 入っていた。

「まただわ。一体誰がこんなわざとらしい嫌がらせをするんだろう」

 しかし怒る気にもなれなかった。

 落ち込んで落ち込んでとことん落ち込み、画びょうを踏んだ一瞬の痛みよりも、前夜から続く胸の痛みの方がもっときつい。

 やるせない思いにため息をついていると、静かな校舎の中で、その時、聞きなれた声が突然聞こえた。

「あら、春日さんじゃない。何こんなに早く来てるの?」

 マリだった。

「矢鍋さんこそどうしてこんなに早いの?」

「クラブの朝練よ。試合が近いからね、少しでも練習しなくっちゃ。それであなたは?」

 マリはバレーボール部に所属していた。

「私はちょっと、あの二人から離れたくて。いつもずっと一緒でしょ。なんかいい様に思わない人も居るしね」

 ユキはちらっとマリの反応を見ていた。

「ふーん。また誰かに嫌われてるんだ」

「そうだね、私ってほんと嫌な女なんだろうね」

 ユキは自虐した。

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