恋の宝石ずっと輝かせて
 ユキ自身、はっきりと物を言うと思っていたが、それは自分の意見を述べるだけで、人のことなんて考えたことがなかった。

 本当に自分の意見が言える事ってこういうことだ。

 マリの発言は、決して嫌味でもなく、悪口でもなく、ユキが気がつかなかった大切なことを忠告してくれた。

 それこそユキのために言ってくれた言葉に聞こえた。

「矢鍋さん、待って」

 ユキが叫んで引き止めるとマリは振り返った。

「ありがとう。今まで嫌な思いさせてごめんね。それから、練習頑張ってね」

 ユキは思いっきり笑顔だった。

 自分からマリに飛び込んだのだ。

 そしてマリはそれを素直に受け入れる。

「何言ってんの、今更。また後でね」

 マリは笑っていた。
 すっきりとして気持ちのいい笑顔だった。

 ユキは一歩前に進んだ気分だった。

 急に心が晴れやかになって、気持ちが落ち着く。

 トイラにも同じ気持ちをぶつけたくなった。自分の素直な気持ち。

 ユキはトイラに早く会いたくて急にそわそわしだした。

 この時、ユキはまだ知らない。
 トイラは間逆の判断をし、ユキが心を開いても、もうどうにもならなくなっていることを。

 トイラもまた分かってない。記憶を失ってもユキがトイラを好きになってることを。

 過去に起こった事のせいで、ふたりは過酷な運命へと流されているようだった。
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