恋の宝石ずっと輝かせて
 象くらいあるような、大きな岩が二つ山の斜面に重なるようにどしっと置かれていた。

 岩にはところどころコケが生えている。

 けっして表面はスムーズでなく、刃物でも作れるようなシャープな断面だった。

 辺りは葉の落ちた木々が高く聳え立ち、風に吹かれて上の部分が小刻みに揺れている。

 殺風景でどこまでも冷たく、あたり一面異質で見るものに不安を抱かせた。

「こんなところに本当に森の守り主がいるのか?」

 キースが疑ってかかっていた。

 ジークは無表情でキースを無視する。

「ここです。この穴に入るんです」

 岩が重なって交わった下の部分になんとかしゃがんで一人入れるくらいの隙間があった。

 ジークがそこを指差している。

 キースは鼻を動かして匂いを嗅ぐ。

 得体の知れない気持ち悪さで顔が強張り、どこか怯える目をトイラに向けた。

「ほんとにここなんだろうな」

 トイラが確認した。

「はい、そうです。ここに入れば、全てがわかります。行きましょう」

 先頭にジークが立ち、岩の隙間の中に入っていく。

 その後をトイラとユキが続き、キースは躊躇いながら中に入っていった。

 キースはここが本物である事に気がついていた。

 中は暗く、外の明るさに慣れてたユキには前が何も見えない。

 しっかりと片手はトイラの手を繋ぎ、もう片手で岩の壁を伝って歩いていた。

 腰を曲げて歩かないといけない低さから、突然大きな空間へと抜け出た。

 湿度があるのか、じめっとして外の寒さと比べて温かい、いや生ぬるい気持ち悪さに近かった。

 空間が陽炎のように歪み、ねっとりとまとわりつく粘っこい空気が渦巻いている。

 飴を触った後のべちゃべちゃするような不快感を感じた。

 とても暗く、ユキにはとてつもない暗闇の空間で、宇宙に投げ出された気分になった。

 他の三人には周りが見えるのか、足取りがしっかりとして歩いている。

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