恋の宝石ずっと輝かせて
第六章 戻った記憶

 仁に引っ張られるまま歩くユキ。

 仁は一向にユキの手を離そうとしない。

 ユキは仁の手を握り返すことなく、ただ掴まれて歩いているにしか過ぎない。

 仁の気持ちに押されてユキは困惑していた。

 ふと後ろを振り返れば、トイラとキースが距離を空けてついてきていた。

 トイラが後ろで一部始終を見ていたことを知ったそのとき、ユキは血の気が引く思いで仁の手を強く払いのけた。

「ごめん、仁。私、どうしていいか」

「いいんだよ、ユキ。何も焦って答えを貰おうとなんて思ってない。まずは僕を見て。それで充分だから」

 ユキは何も言えずにただうつむく。

 手を繋がれていた間、早く行動を起こさなかったことがこの時になって後悔してしまった。

 どうして早く払い除けなかったのか。

 自分を責め、申し訳ない気持ちで仁に顔向けできないでいる。

 このままでは仁を傷つけてしまう。

 はっきりと自分の気持ちを伝えないとと息を吸って言葉を出そうとしたときだった、仁はそれをかわすように思いっきり笑顔を見せた。

「だから言っただろう。答えは今いらないって。まだ僕の何も知らないじゃないか。チャンスをくれたっていいだろう」

「仁……」

「じゃ、僕ここで帰るよ。また明日学校で」

 仁は、元来た道を走って戻っていった。

 途中トイラとキースとすれ違ってあいさつするが、いつものようにくしゃみが出ていた。

 仁の気持ちは嬉しい。

 人から好かれて嫌がる人なんていない。

 しかしユキがこのとき求めているのは仁ではなかった。

 後ろからトイラとキースが距離を詰めて近づいてくる。

 ユキは早足で再び歩き出した。

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