恋の宝石ずっと輝かせて
「誰?」

 ユキは息を喘ぎながらその男をみた。

 不気味な笑みを口元に乗せて、いやらしく微笑んでいる。ジークだった。

 ジークはユキの胸倉目掛けて鋭い爪で引掻く、ユキのシャツが引き裂かれユキの胸元が露になる。

 ユキは殺されると思い、戦慄する。

「さあ、満月になるんだ」

 ユキの胸のアザがゆっくりと大きくなっていく。三日月だった形から、徐々に半円に近づいてきた。

「痛っ、く、苦しい。助けて」

 月の痣が大きくなればなるほど、恐ろしい激痛がユキを襲う。

「ほうら、どんどん月が大きくなるよ。もう少しだよ。もう少し我慢すれば、君は楽になる」

「わけの分からないこといわないでよ」

 苦しくてもユキは抵抗し、ジークに体当たりして突き飛ばす。

「ユキ、無駄な抵抗は止めた方がいい。それで一度死んでるだろ」

 ジークは、ユキの頬を思いっきりぶった。

「ほうら、それ以上痛い思いしたくないでしょ。大人しくするんだ。人間の分際で生意気な。それにしてもトイラもなんでこんな人間に惚れたのか。ほんと趣味が悪い」

「一度死んでる? 人間の分際? 何、何を言ってるの」

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