恋の宝石ずっと輝かせて
 朦朧とする意識の中、ユキは正気を保とうと踏ん張った。

「おや、まだ記憶が戻ってないんだ。そっか、トイラが人間じゃないことも忘れているんだ」

「トイラが人間じゃない? なんのこと」

「おっ、やっと半月になった」

「あああああ」

 ユキは激痛に絶叫した。

「ユキ!」

 そのときだった。黒豹のトイラが弾丸のごとく現れ、ジークに襲い掛かり鋭い爪で背中を引き裂く。

 そしてキースも刃物のような牙でジークの足にかぶりつく。

 ジークは悲鳴をあげ、ふたりを追い払いながら与太ついた。

 ユキは胸を押さえながら、体を起こし、目の前の光景を見て驚いていた。

「大きな黒猫、銀の犬……」

 胸の痛みで、ユキは思うように呼吸ができず、肺に空気が入ってこない。

 めまいがしてあたりがぐるぐると回りだし、立っていられなくなった。

 そのままバサッと地面に倒れ込む。

「ユキ!」

 トイラが叫び、怒りに満ちて再びジークに飛び掛る。

 トイラがジークと戦っている隙にキースがユキを助けようと狼の姿で駆け寄った。

 それを見ながら、ユキの意識は遠のいていった。
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