恋の宝石ずっと輝かせて
「私、今日学校に行かない。休む」

 ユキがあっけらかんと言った。

「それじゃどうすんだ」

 トイラが首を傾げる。

「トイラとデートする」

「じゃあ、僕はどうするの?」

 キースが訊いた。

「キースは学校に行って。三人も同時に休んだら怪しまれるでしょ」

「えっ、僕だけ学校って。ふたり同時に休んでも怪しまれるよ」

 キースは納得できなかった。

「じゃあ、風邪とかでもいっておいてね」

 軽々しくユキは言う。

 キースの顔は呆れながらも、人肌ぬいでやるかという思いになって笑っていた。

 そうしてキースは走って学校に行ってしまった。

 ふたりっきりになったとき、ユキはトイラを見つめてにやっと笑っていた。

「な、なんだよ。その笑いは」

「ヒヒヒ、さてと、どこへ行こう。トイラとこっちの世界でデートできるなんて嬉しい。今日は今までの分を取り返すためにも、思う存分、私に付き合ってね」

 ユキは好きな人と過ごせることの喜びに感極まっていた。

 トイラに冷たくされて、辛い思いを抱いていたのが一気に解消されて、喜びが爆発していた。

 トイラの方こそ何をされるのかビクビクしているようだ。

「さあ、行きましょう!」

 ユキが元気よく叫ぶと、トイラは圧倒されていた。

「はっ、はい!」

 
 遅れず無事に学校についたキースが教室に向かうと、仁が入り口で教室の中を覗いていた。

「オハヨー、ジン」

「あっ、おはようキース、ねぇ、ユキは?」

「ユキ、カゼ、ゴホンゴホン」

 キースは咳き込む真似をした。

「えっ、風邪? トイラも見かけないけど?」

「トイラ モ カゼ」

「えっ、ふたりで、風邪……そうなんだ……」

 仁はどこか落ち着かない表情で、自分の教室に戻っていった。
< 191 / 360 >

この作品をシェア

pagetop